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T-HAUS
エッセイストの玉村豊男さんの最初の田舎暮らしの家です。
都市的な生活と豊かな自然環境を楽むことが目的でした。居間の床は石英砂です。
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『T-HOUSE』
T-HOUSE
周辺環境・敷地・依頼主の条件
この住宅は軽井沢の別荘地の一画に建っている。周辺は林で隣接する建物はない。来客の多いTさん夫婦が1年を通じて生活する他、文筆業を営むTさんの仕事場でもある。避暑地として知られる軽井沢も冬の寒さは厳しい。したがってこの住宅は開かれたリゾートハウスであると共に閉ざされたシェルターであり、住居であり、また仕事場であるという多様な側面を持つことになる。
平面・断面・立面計画
全体の構成は計画上の公・個の分節、内外等の対立的な要素をずらしながらかみ合わせることにより、より大きな全体性を暗示する方法に基づいている。
平面は点対称に組み合わされた2枚の壁によって成る。それらは中央部に厨房、設備などの機能化された部分を挟み、両端に個室と公室を囲んでいる。個室部分は分割され、機能化されているが、公室(ホール)は一続きの大きな空間で、居間や食堂などという社会的に機能化された性格を持たない。公室の床は精製された硅砂である。形のない砂の床は、定型化された居間や食堂のイメージをぬぐい去り、住む人の生活により自由な想像力を傾けることができる。
それぞれの領域を囲む壁は、かみ合う部分に内部と外部の断層としてのパティオをつくっている。ふたつのパティオはエントランスホールと浴室のライトコートにそれぞれ性格づけられている。
点対称的な平面に対し、立面は線対称的である。直交する切妻から成る集中式建築の形式に基づいているが、ずれてかみ合うマッスによりその対称性は壊され暗示されるにとどまる。しかし類型的な直交する切妻のイコンは、建築に見えない輪郭を与え全体性を律している。シフトされた壁面はそれぞれ濃淡のグレーに塗りわけられ対立性をきわだたせている。
抽象的な輪郭を明らかにするため、躯体は線で連続する外部の仕上げ面や納まりを逃げて架構されている。同じ理由で、木構造の一部がRC造になっている断面構造も隠されている。
RC造による1階と中間階の床スラブは居室を湿気の多い地面から持ち上げ、一部2階床まで立ち上がった壁は、書庫の重さを支えると同時に水回りの安全性を計っている。
45度に組み合わされたテラスは戸外の生活に役立つだけでなく動き回る建築をつなぎとめている。
(新建築1983年8月号に掲載)