Works

K-HAUS

敷地を条件一杯に利用した都心の二世代住宅です。形の上で完結した家のイメージを持てるようにしています。設備の合理的な収まりにも配慮しています。

恵比寿・渋谷近辺の作品地図
TEXT『K-HOUS』

K-HOUS

敷地は国道246から少し離れた南青山の一角にある。昨今の時勢か場所柄のためか、古い独立住宅は少なく、集合住宅あるいは店舗、オフィスビルが目につく、変わりつつある都市の一角である。住宅として使われる建物ではあっても、限られた敷地を活用し、可能な最大の床面積を実現することが設計条件のひとつとなった。かくして敷地の大半は建造物で埋まったが、ガレージをピロティとして開放し、ストリートレベルの広がりを得た。

建築

設備と動線を挟んで両端に寝室と居間のある単純なプランである。対応して部屋外周部分を逆梁に設備部分を順梁にしてフラットな直天とし階高を切り詰めた。3分割された平面を繋ぐものとして長円のドームが載せられる。斜線制限の見えざるフレームに内接してこそいるが、ドームの強い形象性ゆえ切り取られたものにはない自律性を保つことができた。立面は、ひとつの輪郭の中にいくつかの類型が相を変えて現れるよう目論んでいる。
両端の部屋部分は柱と梁のつくるフレームで囲まれ、中央の設備、動線部分は耐力壁と厚いスラブによる壁構造に近いものとなっている。外壁の仕上げは、寝室側と居間側で色の異なるせっき質タイル、中央部はコンクリート打放しである。外部階段および床仕上げには大谷田下石を使用した。ドーム部分は銅板葺きである。素材そのものも外観上の類型的なイメージを喚起するモティーフのひとつと考えた。また、硬い建築に対し、あえて柔らかいテクスチュアを感じさせる材料を用いることで、設計の合理化が冷たさや機械的な単調さに陥らないように心掛けた。

都市の共同住宅ム集合住宅に学ぶ

この住宅は2世代2世帯の家として使われる。地下と1階、2階と3階が各々の世帯に分かれている。ふたつの世界を結ぶ内部階段はなく、壁と庇によって囲まれた外部階段でのみ繋がっている。玄関も別である。それぞれの暮らしを尊びながらつかず離れず生活し、住宅以外の使い道にもフレキシブルに用い得る、そのような要望がこの建物を、都市の共同住宅の典型あるいは類型へと向かわせた。共同住宅として合理的なプランニングと、技術的にさまざまなレベルで身嗜みが必要とされた。特に設備廻りの納まりでは集合住宅の設計から学ぶことが多かった。
厨房、水廻りはすべて外部に開放された設備スペースに面している。ほとんどの給排水給湯設備、空調室外機がそこに集められている。配管はすべて露出させた。容易に交換修理等が行えるからだ。水廻りスラブは梁下までレベルを下げ、最小限の室内配管もすべてスラブ上とした。騒音の問題や漏水事故の被害を小さくするためである。

いくつかの輪郭線

この建物のヴォリューム構成とフェネストレ-ションには、ずれを意図している。対称と非対称、古典的類型と即物的で抽象的な顕れを輪郭線の中に共存させたかった。果てしなく絡まり合う都市のスカイラインや見えがかりの中の一断片として、謎や洒落であり続けてほしいと思っている。たとえ形は虚、物なら実であろうとも、建築と都市にとってのその間は皮膜の間ほど狭くない‥‥。この建物のシルエットは都市にたどり着くだろうか。