Works

二重の家

主要な部屋の周辺を動線や収納、キッチンやインドアテラスで囲み、
二重にすることで居住性の向上を図った「BOX in BOX」形式の住宅です。

TEXT『二重の家』

二重の家

場所と方法

敷地は前面道路より1.6m程度高く、巾9.5mの北側以外の隣接地は全て建物で埋まっている。道を隔てた北側の公園には見事な桜の木があるのでその眺望を活かし、必要な採光は立体的なライトコートを利用することにした。
建物は4本柱の1スパンラーメンと、周りを囲む壁で構成されている。
その隙間に動線や設備、収納など生活の補助となる役割を納め、囲まれた主要な空間が、なるべく外部に触れないようにしている。
屋根も躯体の外部を断熱し折板を置いた二重屋根とした。
中央部居間の床暖房は床下に砂利を充填して大きな熱容量を与え、採光のための中庭は貯留した雨水を利用して充分に保湿出来るよう深く土を残した。
そのような方法により、静かで温度変化の少ない生活環境を作ることを考えた。

壁と建具

設計は平面と断面に螺旋形で囲まれたひとつながりの場所を作ることから始めた。その外周の隙間を必要な役割に沿って、間仕切りや建具で切り分けた。
建物外周部と中央部を隔てる建具は、時間や季節に応じて音や温度の調整をする道具である。また、建具で分けられた場所を超えてつながっている空間は体感的な広さを作り出している。

BOX in BOX

建物の二重構造は打ち放しと煉瓦タイルによる外周部と、白い箱状の入れ子になった内部によって作られている。二重の箱は熱負荷が小さい中箱を静かで温度の安定した生活の場所として、内外の箱の隙間を収納、設備等のバックアップスペースとして使われている。インテリアとして居間に飛び出したキッチンは、入れ子の入れ子になった3つめのBOXでもある。

距離感と空感

二重の箱は自然環境と生活環境の距離感を作る方法でもあった。
適切な距離感は自然条件を快適な生活環境に変える。
この住宅では空気の容れものとしての空間ではなく、物を通して人が気持ちよく体感できる空気、つまり空感を大事にしたいと思った。それは立体的な形や広がりだけでなく、音や光りや温度などが作り出す場所の質感のようなものだと考えている。

(住宅特集2006年6月号に掲載)