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西つつじヶ丘の家

地下と一階をRCで作り、上部を木造にした住宅です。
斜面地の特性を活かして土地全体を建築として利用しています

TEXT『西つつじヶ丘の家』

西つつじヶ丘の家

住宅は、留まることのない人の生活が、特定の場所に結びつくときに現れる。場所があり、人がいて、社会環境や自然環境に関わりながら生きる。住宅はその為の道具であって良い。西つつじヶ丘の家は、落ち着いた住宅地に、夫婦と3人の子供の為に計画された住宅である。作り終えて改めて思うのは、住宅の中に特定の場所や環境を、生きられる場として再構成する建築の技術、あえてこの言葉を使いたいと考えているのだが、それによって作られた場とそれを生きられるものとする生活の技術が住宅の中に表裏一体のものとして現れて見えるということだった。建築に本質的な架構された場を成り立たせるものと、生活をより豊かに成り立たせるものは、配られた手札と、ゲームそのものの前提となっているカードの裏と表のように思えるのである。十数年前にAAスクールのワークショップでピーター・ウィルソンから聞いた、建築がともに持っているfunctionとuseを分けて考えなくてはならない、という言葉も思い出した。機能的な住宅とよく言われるが、混同されて使われている言葉の中に基本的な意味を考えることは難しい。
場を作り出す方法として僕たちが最初に試みたことは、雛壇状に造成された分譲地の土地を、そっくり人工的な構造物に置き換えることだった。地形的環境や街並みの連続性は、切り分けられた土地の外に連続して行く、そのことを念頭に置いて僕たちは植木鉢(つまり雛壇状の分譲地)の土に大地の幻想を持つことを止めた。敷地の範囲にあるものを内部外部を問わず、場の架構体と考えた。外部の階段から中庭に向かうアプローチは外構ではなく当初から基本的なこの建物のエレメントとなった。敷地段差を利用して採光通風とも遜色無い地階を基壇部にして中庭と一体に計画されたワンスパンのRC構造体で完結された一階を主要階として、木造トラスの構造体の大きな屋根が二階となっている。
使い勝手(use)から見れば主要階が居間、食事室、台所そして中庭、二階部分が寝室と浴室地階は多目的室となっている。空間的なプログラムとしては主要階が架構と領域のみの何も無い空間、二階が構造体と使用目的によって分節された単位を持つ空間、地階やガレージ部分は架構体と地形との間に少しゆるめられた目的に供する部分となっている。
断面構成を見れば、地下室と屋根裏を拡大解釈した平屋とも言うことが出来る。RCの構造体と木造部分は間口にずれがあり、そのずれがアプローチの庇とも室内の階段とも成って外部に表現されている。


階段 (外観写真参照)
この階段はRCと木造の構造体のずれの間に鉄板の片持ち構造で差し込まれている。12ミリの鉄板を折り曲げたものに12ミリの直貼りフローリングを張り付けただけの極薄い階段である。建築構成の隙間に、人の歩みのフィギアーそのものを記号のようにはめ込んでいる。