Architect

料理に目覚めた日

2006年7月

僕は、今では普通に料理が出来ますが、子供のときはまったく料理などしたことはありませんでした。普通に、というのは抵抗なくという意味です。
子供時代の唯一の料理体験は、母と一緒に卵の入った「お澄まし」を作ったことがあるくらいです。その後もあえて挑戦したりはしませんでした。
料理をしたことがない僕と一応学習はしているものの応用力のなかった妻が結婚し間もない頃のことです。
義母から「穴子の白焼き」をもらったことがありました。
妻は「蒸し寿司」を作ろうと思っていたのだそうですが、椎茸を買い忘れたのだそうです。
料理を知らない僕は「穴子」「椎茸」「蒸し寿司」に何の関係があるのかも分からなかったのですが、妻のマニュアルには大変な混乱をきたしたらしく、私には何も出来ないと言ってきました。
ぇ? とは思ったのですが。何かのはずみでじゃ僕が何か考えてみようということになりした。思えばこれが罠にちがいありませんでした。今考えてみれば、ほかのものを作るなり、椎茸を買いに行くなり様々な選択肢があったはずです。しかし妻に騙された(?)僕はすっかり料理を作る気になっていたのです。
「穴子の白焼き」から僕は急にギリシャ料理を作れないかと思いつきました。
根拠は全然ありませんでした。ただ「刑事コジャック」って知ってますか?
テリー・サバラスというスキンヘッドの俳優が演じている刑事ドラマなのですが、彼は
ギリシャ系のアメリカ人です。たまたま前の晩見ていた番組では、彼の誕生日のパーティにギリシャ出身の親戚一同が集まり、アコーディオンで不思議なギリシャ音階のメロディに興じて大騒ぎしていたシーンがありました。
それを思い出してギリシャ料理と思いついたのでした。ギリシャに行ったこともなく、
ギリシャンレストランに行ったこともない頃でした。
オリーブオイルとカッテージチーズ、それと黄色いピーマンなんかがあれば何か出来るんじゃないかなぁ、と思い近所のスーパーマーケットに行きました。
別にこの時点で椎茸を買って「蒸し寿司」にしても良かったのですが、妻に乗せられ、すっかり自分で作る気になっていた僕には「ギリシャ料理」のことしか頭にありませんした。
ちゃんとした料理は作ったことがないので、よし!雰囲気で行こうと思い、昨夜のメロディーを何となく思い出し、ギリシャ人に憑依して、いい加減なギリシャ風メロディを口ずさみながら、[穴子のギリシャ風サラダ]をつくりました。
これが僕の初めての料理です。
美味しいじゃない、ありがとう!と妻に言われ、はっはっは俺は料理も出来るんだと思い込んだのは、もしかすると妻に2度騙されていた、のかも知れません。
とにもかくにもそれ以来、見よう見まねで料理を作ることが出来るようになりました。本当のきっかけか妻に騙されたのかは分かりませんが、抵抗感や恐れはなくなりました。
ちょっと聞いたりレシピを見たりしながらいろいろやってみて「普通」に出来るようになりました。
今は、妻が不在の時や週末に食事を作ることは当たり前のようになっています。
けれども本を読んだり習ったりしたことは未だなく、レシピやマニュアル通りに作ったこともありません。材料や手順の参考にはしても、自分の好みで適当に作り、あり合わせの代用品で作ることもあります。素材の仕入れや道具にまで趣味的にこだわった、「男の料理」と呼ばれる特別なものではありません。
絵を描いたり唄を歌ったり、遊びでスポーツをしたりする「生活の楽しみ」のひとつに、食べることは勿論、料理も加わったのだと僕は思っています。