Architect

冷蔵庫のパッケージングから

2007年5月

あまり家電製品についての知識がなかったものですから、あるクライアントが購入した冷蔵庫を見て感心してしまいました。
機械が最上部の奥に付いているので、通常の下部に機械があるタイプに比べて同寸で有効容量が大きいというものです。
有効容量が変わらなくても、中も見えて出し入れも楽な下部の容量が増えたのですから使いやすいに違いありません。
最上部の奥なんて手も届かないし見えなくて使い難い、そのスペースに機械を置くのは良いアイディアだと思いました。
自動車などのデザインでパッケージングと言われるものの考え方です。往年のVWやミニには小さな空間に居住性と、機械としての性能や使い勝手を詰め込むための知恵が溢れていました。
機械の収まりと人の都合がぴったりはまるのは良い設計だと言えるのでしょう。
現在の住宅は「住むための機械」とは言えませんが、「機械無しには住めない建物」にはいつのまにかなってしまいました。
都市の生活には、インフラや情報へのプラグ・インが欠かせませんし田舎なら機械は要らない、ということでもありません。
いずれにせよ機械が要るのです。
局地的な都市化の時期を経て、全世界的な都市化(あるいは都市の世界化)が進む今、環境やエネルギーへの配慮は住宅の設計者にとっても大きな前提となりつつあります。
住宅は生活の出来るな機械を付けた箱を目指すのではなく、住宅そのものが生活をバックアップする装置や道具になるべきなのだろうと思います。
土地や空間に限りがあるように、環境の容量も限りがあるのは言うまでもありません。
冷蔵庫ほど簡単なレイアウトの機械にも、形で見える改良の余地があったのですから、住宅にもまだまだ出来ることがありそうです。

(住宅特集2007年7月号掲載)