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ミシュラン

2008年1月

ミシュランガイドブックの東京版が出た
と巷で騒がれています。星の付いた店に予約が殺到したりなど、ご同慶の至りです。
ご存じの通りミシュランのガイドブックはタイヤメーカーの販促事業として作られ続けてきたものです。同業のピレリもガイドブックを出していますが、普通の旅行ガイドブックなのでそんなに騒がれません。
レストランの格付けに特化して権威となったミシュランは、もはや旅行ガイドとは別なものでしょう。けれども背景には自動車や旅や特別な食事というヨーロッパ的な楽しさがあって悪くは思いません。ランク付けもガイドブックを作る人の判断なのですから悪くないと思います。参考にはなりますがなんの保証にもなりません。現にミシュランの★には結構騙されました。
それもしかたありません。
スポーツの試合に必ず「番狂わせ」がついて回るように、料理やスポーツのランキングは既製品の評価と全然違い、試合結果や料理そのものではない人やチームに対する相対的な評価だからです。
にも関わらず、「お墨付き」に人は流れます。
お金を使うなら、より確実な見返りが欲しいので無理からぬことです。
情報は不安も取り除きますが、情報にならない豊かな部分も取り除いてしまいます。けれど料理もスポーツもガイドブックの外から新しい個性が現れてくるからこそレベルも保てるし継続した文化ともなっているのです。
再現性に乏しい「建築」も情報化しにくい部分を持っています。
それを事前にお金と交換したり言葉で書かれた法律に当てはめるのは不安なことです。

確認申請制度の硬直化や、既視的で画一的な建物ばかり増えるのも社会不安と対になった情報化が引き寄せる必然的な不毛なのかもしれません。